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焼き絵(やきえ)は、木材などの表面に熱した 鏝 などの道具で焼き跡をつけ、それによって絵や文様を描く技法である。焼き付ける道具の先端部の形や温度、道具の押し付け方などによって微妙な陰影や諧調を表現することができる。焼き跡をつけた後で彩色をすることもある。木材はシナノキ、ブナ、カバなど木目の細かい堅材がよく用いられるが、マツやカシなどが使われることもある。同じ方法が皮革材に用いられることもあり、その場合は植物を用いた特別な方法でなめした皮を使う(薬品を用いてなめしたものだと焼いたときに有害物質が発生するため)。乾燥させたウリ科の植物の実( 瓢箪 など)の装飾にも用いられる。
焼き絵は古代エジプトやアフリカの部族などを含め、有史以来広い世界の範囲で例が見られる。焼き絵作家のロバート・ボイヤーは、焼き絵の歴史は有史以前、人類が焚火から得た燃えさしを使って装飾を行ったころにまでさかのぼることができると仮定している。中国では 漢王朝 時代から、焼いた針を用いた装飾が知られていた。ヴィクトリア朝イギリスでは焼き絵用の器具が開発され、これによって焼き絵に対する興味が社会に広まった。それまで焼き絵を表現する言葉として使われていた"pokerwork"(鏝の作品)に代わり"pyrography"(パイログラフィー)という語が使われはじめたのもこの頃である。19世紀の終わりには、アルフレッド・スマートという名のメルボルンの建築家が、中に空洞を設けた白金の鉛筆を通し、ベンジンの蒸気を噴出させることによって、木材に水性塗料を焼き付ける方法を開発し、これによって色を用いた微妙な表現が可能になった 。20世紀には電気で熱する針金を用いた専用の器具が開発されて作業が簡易になり、アール・ヌーヴォーの作家は木箱などの装飾にしばしば焼き絵を用いた。焼き絵はまたルーマニア、ハンガリー、フランドルを含むヨーロッパの広い範囲における伝統工芸に見られるほか、アルゼンチンなど南アメリカでも伝統工芸として扱われている。